公園施設の劣化予測手法の提案

国土交通省は平成21年度より、生活者の視点に立った安心で質の高い暮らしを実現するため、大規模地震に備えた市街地の防災性の向上や、公園施設の戦略的な機能保全・向上対策による安全性の確保等、都市公園における総合的な安全・安心対策事業を緊急かつ計画的に実施し、子どもや高齢者をはじめ誰もが安全で安心して利用できる都市公園の整備推進を目的として「都市公園安全・安心対策緊急総合支援事業」を創設し実施しています。

上記対象事業の一つとして、公園利用者の安全性及びライフサイクルコスト縮減の観点から、予防保全型管理による長寿命化対策を含めた計画的な改築等の推進を目的とする「公園施設長寿命化計画」があります。

この計画では、対象とする公園施設の健全度を把握するための点検調査、長寿命化のための基本方針、ならびに日常的な維持管理に関する基本方針の策定、長寿命化対策による実施効果(ライフサイクルコストの縮減額)の算定が求められます。

ライフサイクルコストの縮減額を算定するにあたり、長寿命化を図った場合の耐用年数を設定する場合、「都市・地域整備局所管補助事業実務必携」による処分制限期間を踏まえ設定することとなるが、同じ材質であっても利用される形態により劣化の進行状況は大きく異なっているのが課題となっています。

施設点検結果を踏まえた施設健全度と経過年数との関係を統計分析することにより、耐用年数の設定根拠が明確で予測精度の高い手法であると考えます。


1.劣化予測の方法

公園施設の劣化進行の予測方法には、以下のようなものがあります。

(1)部材毎の寿命を設定、(2)理論的な劣化予測、(3)点検結果による統計分析、(4)遷移確率を用いた方法

予測方法は、使用データや使用目的を考慮し決定されます。「部材ごとの寿命を設定」する方法は、現在の点検結果の蓄積状況が少ないため困難。次に、「理論的な劣化予測」については、「公園施設長寿命化計画」で実施する点検調査での損傷結果からその劣化要因を特定するのは難しい。また、調査対象が個別施設の部材ごとの劣化予測の検討であることを勘案すると、「遷移確率」は適していません。

したがって、点検結果を統計的に整理、分析することで劣化進行を想定するBの「点検結果による統計分析」を用いることとします。


2.点検結果による統計分析手法

統計による回帰分析では、一般的な回帰分析の他に様々な回帰分析があり、その一つとしてロジスティック回帰分析があります。通常の回帰分析は、結果となる数値と要因となる数値の関係を示す場合や相関を求める場合に用いる統計的手法であるのに対し、ロジスティック回帰分析は、ある事象が発生する確率を求める場合に用いられ、医学や社会科学でよく使用される統計的手法です。

本劣化予測では、公園施設の使用可能確率が年数の経過に伴い、どのように変化するのかを知りたいことから、点検調査より判定した劣化度を使用可能or使用不可能の2変数に分類し、施設健全度と経過年との相関関係を明確にするため、ロジスティック回帰分析を採用しました。


3.分析方法

1)施設・材質分類の設定

施設の利用目的と頻度を踏まえ、遊具施設と一般施設(遊具以外の施設)に大別する。また、遊具施設については可動式と固定式に細別する。

材質については、予防保全型管理施設を対象とすることから、鋼製と木製に分類する。

2)点検調査分析データの整理(2値化)

点検調査によって、A〜Dに4段階評価した施設劣化度をロジスティック回帰分析を行うために、次表2、3に従って使用可能と使用不可能の2つの区分に再分類する。

3)データ例によるロジットの計算と予測式
(1)点検施設の再分類

点検した施設を前述の方法で劣化度判定し、4分類(劣化度A〜D)から2分類(使用可能・使用不可)に再分類する。

(2)ロジットの計算

再分類した使用可能数と全数(使用可能数+使用不可能数)に基づき、使用可能確率(使用可能数/全数)及びそのロジット(下表のY)を計算する。

(3)最小自乗法による未定係数の決定

未定係数α0とα1を仮定し、以下のロジスティック回帰式において、Y及びXを与えて最小自乗法によって未定係数を求める。

最小自乗法の結果 α0=4.31 α1=0.15 施設の使用可能確率Pは、上記ロジスティック回帰式をPについて解けば、 となる。 上式に最小自乗法の結果を代入すると、劣化予測式が求まる。 Cグラフ化 分析した劣化予測式から設置後の経過年数と使用可能確率の関係を表す劣化曲線を描くことができる。

4.分析事例による考察

分析事例となった自治体では、毎年20百万円以上の維持修繕を進めてきたこともあり、指標の期限となる供用限界期限を使用可能確率50%(半分の施設が使用不可となる確率)とすると、全ての施設において処分制限期間の2倍以上の数値となりました。

施設・材質分類で見てみると、木製施設では可動式の遊具施設が最も早く劣化が進み、次いで固定式の遊具施設、一般施設となっています。

鋼製についても同様な結果となっていますが、木製施設がより顕著に表れています。

このように、施設点検結果を踏まえた統計分析(ロジスティック回帰)手法を用いることにより、耐用年数の設定根拠が明確で、予測精度の高い「公園施設長寿命化計画」を策定することが可能となると考えます。

公園施設の維持管理方法は自治体によって様々であり、利用形態や利用頻度も異なることから、その劣化の進行度合いもまちまちです。

「公園施設長寿命化計画」においては、計画的な修繕・改築計画のもとライフサイクルコスト縮減額を算出することとなりますが、その場合施設の耐用年数の設定が肝要となるため、現状の施設の劣化進行状況の把握が重要となります。

今回提案する手法については、同様の材質によっても利用形態による劣化進行の違いを根拠立てて明確にすることができることから、自治体の現状を見据えた、より現実的な「公園施設長寿命化計画」の策定が行うことができるものと考えます。

また、自治体によっては公園施設数が少なく統計分析を検討するサンプル数が少ない場合も考えられます。このような場合は、同様な条件(自然環境・維持管理体制など)を持つ自治体のサンプルを参考として劣化予測を想定することができます。

(太田)